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糖尿病の人は歯科治療を受けるときは「感染」と「低血糖」に注意

【糖尿病の人は歯科治療を受けるときは「感染」と「低血糖」に注意】

健康寿命を延ばすために欠かせない歯のケアや歯科治療は、持病を抱えている人にとっても重要だ。しかし、健康な人とは違って注意すべきポイントがいくつもある。今回は「糖尿病」のケースについて、解説してもらった。

糖尿病は歯周病と密接に関係している。いずれも、炎症の悪化や組織の障害に関わる「TNF-α」という炎症性サイトカインの血中濃度が高くなるため、糖尿病があれば歯周病や歯の喪失リスクが高くなり、歯周病があれば糖尿病の状態を悪化させることにつながる。だからこそ、糖尿病の人にとって歯のケアや歯科治療は重要なのだ。

とはいえ、糖尿病の人が歯科治療を受ける際は注意しなければならない点がある。

「糖尿病の患者さんは『易感染性』と呼ばれる感染症にかかりやすい状態になります。高血糖では、白血球の一種である好中球の機能が低下して、体内に入り込んだウイルスや細菌を排除する働きが悪化するうえ、毛細血管の血流が悪化して酸素や栄養を体の隅々まで十分に届けられなくなり、細胞の働きが低下するためです。われわれの口腔内には、歯周病を引き起こす原因菌をはじめ、約400種類、100億を超える細菌が常在しているといわれます。抜歯や歯石除去、インプラントなどの出血を伴う外科的な歯科治療を実施したときにそれら常在菌が血管内に侵入すると、健康な人は問題なくても、高血糖の患者さんでは菌血症などさまざまな感染症を起こすリスクがあります。ですから、糖尿病で血糖コントロールが不十分な場合、外科的な歯科治療は行わないケースがあります」

日本糖尿病学会が合併症予防のための目標値としている「7.0%未満」を上回っている場合はいったん外科的な治療は見合わせる場合があります。そのうえで、糖尿病を診ている主治医に文書などで検討している歯科治療の内容を伝え、患者にきちんと血糖コントロールをしてもらってからあらためて治療を行うという。

「糖尿病の患者さんの外科的な歯科治療では、感染症予防のために前もって処方した抗生剤を治療の2時間前に服用してもらい、薬の成分の血中濃度を高い状態にしたうえで治療を実施するケースもあります。また、高血糖では血流障害などで傷の治りも遅くなるので、しっかり時間をかけて止血や術後の消毒を行うことも大切です」

糖尿病の人が歯科治療を受ける場合、治療前に丁寧に歯磨きをしたり、うがい薬を使うなどして、できる限り口腔内の細菌を減らしておくように意識したい。

■空腹になる時間帯の予約は避ける

感染対策だけでなく、「血糖値の急激な変動」にも気を付ける必要がある。歯科治療では、精神的にも肉体的にも大きなストレスがかかるため、血糖値が急激に上昇する。われわれはストレスを感じると交感神経が活発になり、アドレナリンやコルチゾールといったホルモンが多く分泌される。これらのホルモンは血圧や心拍数、血糖値を上げる作用があるため、糖尿病の人がきちんと血糖コントロールができていないと、想像以上に血糖値が上がってしまう。

「反対に血糖値が下がりすぎて低血糖を引き起こすケースもあります。糖尿病の患者さんは普段から経口薬やインスリン注射などで血糖を下げていますが、薬を使ってから食事をとらずに歯科治療を受けると、治療中に急激に血糖値が下がってしまう危険があるのです。低血糖は血糖が乱高下した時にも起こるので、治療のストレスで血糖が上昇している状態ではさらにリスクがアップするといえます。低血糖が重症化すると、意識消失や昏睡状態になって命に関わるので、万一に備えて血糖値を上げるためのグルカゴン製剤を常備しているクリニックもあるほどです。糖尿病の患者さんは、食事前で空腹な時間帯の診療予約を避けるなど、低血糖を起こさないようにする注意が必要です」

糖尿病の人は、歯科治療による「感染」と「低血糖」のリスクが高いことを頭に入れ、きちんと血糖コントロールをしたうえで治療に臨む必要がある。

引用:https://hc.nikkan-gendai.com/articles/278599

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